川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
エッセー  旅  たわごと    雑感 出版紹介 



                    監獄ホテル


    元看守の説明でのツアーに参加した。
    表門までは何度か行ったことがあるが、中に入るのは初めてだ。

    旧奈良監獄は、明治政府が監獄の国際基準化を目指して計画した五大監獄の1つで、
    明治41年に完成した。ちなみに千葉・金沢・長崎・鹿児島、そして奈良の五ヶ所である。
    レンガ造りの美しい監獄は、戦後は少年刑務所として運営され、2016年(平成28)3月に
    108年の歴史に終止符を打った。
    ロマネスク調の貴重な建造物は、翌年に重要文化財に指定されている。
    
    独居房・雑居房・医務所・隔離病舎・牢舎を見て回る。
    塀の中は想像していたよりも遥かに広く、日本庭園のように石灯籠があるのには驚いた。
    流石に元看守の説明は臨場感がある。

    だが楽しみにしていた、
    放射線状に伸びた5棟の舎房が見渡せる中央看守所や、
    600人以上の受刑者を収容でき、雨の日には運動場になったという講堂が見学
    できなかったのは残念だった。 見所なのに……。
    
    星野リゾートの日本初・「監獄ホテル」の工事中なのだ。
    なんと、監獄がホテルに変わるのだ。
   
    ホテルが完成したら元受刑者は宿泊に訪れるのだろうかと、私は余計なことを考えながら、
    鉄格子のはまった窓に蔦が絡まっているのを眺めていた。
    


                  2023.10.29