川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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             夏眠から覚めないと


    今日で8月も終わり。
    そろそろエンジンをかけないと、9月からの動き方を忘れてしまう。
    ということで、大和郡山へ知人が出演する歌劇を観に行った。

    「あれっ」
    雨女の私を裏切ることなく、家を出る直前から雨が降り出した。あんなに晴れていたのに。
    夏バテをしているはずなのに、雨女の威力は落ちていないらしい。
    妙なところで安心をした。

    白壁の美しい「やまと郡山城ホール」で、市民劇団「古事語り部座」による
    「郡山ラプソディ」が上演される。
    雨に煙った郡山城は目の前だ。しっとりと情緒のある街並みである。

    大正末から戦後に至るまで、この街には少女歌劇団があったという。
    そういえば堺の大浜にもあったらしい。日本のあちこちにAKB48のような
    アイドルユニットが作られたのだ。
    同じころ、紡績工場でも賑わっていたらしい。
    そして、金魚農家。
    それらをテーマにした芝居である。
    50名ほどの団員が舞台狭しと、踊り歌い観客を魅了する。
    私の目は知人に釘づけだ。キラキラと生命が躍動して美しい。
    最高齢は77歳だとか。

    これだけの舞台を作り上げるために、どれほどの練習を積んだのだろう。
    一瞬を作り上げるために、どれほどの時間を重ねたのだろうか。
    舞台上からは見えない、彼や彼女たちを想像して、私の胸は熱くなった。

    拍手は鳴りやまない。
    
    2時間半の舞台が終わりホールを出ると、雨は上がっていた。
    夜の空気はすっかり秋のそれだ。どこからか虫の声が聞こえてくる。
    9月から頑張れそうな気がした。



    
             2019.8.31