川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                   一年の計は



    そう言えばここ何年も「一年の計は元旦にあり」などという、凛々しく健全な事を
    言わなくなったなあ。目標や夢を持たなくなったなあ……。
    たとえ三日坊主に終わろうとも夢は大事だ。

    と言うことで、今年の目標をたてた。
    私は乗り鉄である。
    欲は言わないが、まだ乗った事のない近畿地方やその周辺のローカル線に乗ろうと決めた。
    はてさて何か所を制覇できるか、楽しみである。


    昨年の乗り納めは「伊賀鉄道」だった。
    伊賀へは何度か行ったことがあるが、いつも車である。
    友人から近鉄電車の無料の乗車券を貰っているので、それを使ってである。
    期限は12月31日だ。あと数日で年が変わるという、慌ただしい日に出かけた。
    
    橿原神宮から大和八木を経由して伊賀神戸駅で降りる。
    そして目的の伊賀鉄道である。ここからは近鉄線ではない。
    伊賀神戸から伊賀上野までの14駅だが、初めての路線は、期待でドキドキとする。
    伊賀上野城のそばを走らせるために大きく曲がったり、家の軒先すれすれを走る電車は
    銀河鉄道999の松本零士がデザインした忍者列車だ。車内には忍者が潜んでいる。
    つり革は手裏剣だ。それにメーテルが「くノ一」という贅沢さ。
    子供はもちろん、銀河鉄道ファンにはたまらない。
    上野市駅で途中下車をする。
    「上野市駅」が「忍者市駅」と愛称で呼ばれているのは微笑ましい。
   
    伊賀上野駅に着くや、1時間に1本のJR関西線・加茂行きが到着。
    1両仕立ての、これぞローカル線という電車に乗り込むが、存外に乗客が多い。
    「やぶっちゃの湯」で知られる島ヶ原を過ぎ、電車は木津川沿いに笠置、月ヶ瀬と乗客を
    降ろし、乗せしながら、長閑な山間部の風景のなかを加茂駅に向かう。
    加茂駅は馴染みの駅なので、久し振りの友人と会った気分だ。
    加茂から奈良へ、奈良から下車駅の柏原まで、JR大和路線は西に向かって走る。
    茜色に染まった空の下を走る列車は、さながら茜列車。

    12月27日の、一人旅である。
    
    今年中には「天竜浜名湖線」に乗ってみたいものだ。
    
   

    
                    2023.1.12