川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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          いまごろは………



    私が生まれ育った三宅町

    いまごろは獅子舞が家々を回って、舞っているんだろうなあ
    獅子が口を大きく開けて、子供の頭を噛んでいるんだろうなあ
    丈夫になるようにと
    恐ろしがって子供は大声で泣き叫んでいるんだろうなあ
    おかあちゃん、毎年玄関に座って、祝儀袋を手に、獅子の来るのを待っていたなあ

    いまごろは、神社の本殿で御神楽が舞っているんだろうな
    白い上着に緋の袴 両手に持った鈴が涼やかな音を響かせて
    大きくなったら 巫女さんになりたいなって 思ったなあ
    だれかが、巫女さんは汚れた人はなられへんねんよ、って
    
    しめ縄の張られた楠の大木
    道真の腰掛け石 
    そして、餡もち 
    

    10月1日になると、決まって思い出す光景
    頭の中のカレンダーは この日だけは忘れない 不思議だなあ
    獅子舞が見たいなあ
    でもおかあちゃんのいない三宅町に帰ってもなあ……


                     2019.10.1