川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                    異変



    裏庭の様子がなんだか変だ。すかすかと変に寂しい。

    狭い裏庭は隣家の庭と接している。
    隣家の芙蓉は薄紫の花をつけ、私を楽しませてくれているというのに、我家の庭はなにか
    へんだ。緑色の嵩が妙に少ないのだ。

    「エッ、カンナが消えている!!」
    毎年、邪魔になるほどの大きな葉で、あんなに存在感を主張していたのに……
    朱色の花をチロチロと葉の間から覗かせていたのに……
    暑苦しいほどの生命力のある植物なのに、影も形もない。
    
    けっこう私の好きな花なのに。
    子供の頃の思い出には、必ず出てくる花なのに。

    この暑さのせいだろうか? それとも私が水やりの手を抜いたせいだろうか。
    きっと、そうだ。
    そういえば今年は蝉の声も、あまり聞かなかった。
    蝉も35度をこすと鳴かないそうだ。抜け殻はあちこちで見つかるのに。
    
    暑苦しいほど茂るカンナも、耳が痛くなるほどの蝉の鳴き声も聞こえない裏庭は、
    素っ気ない。
    花の種をまこうと思った。


                    2025.8.31