川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
エッセー  旅  たわごと    雑感 出版紹介 
 


                    日傘



    連日35度を越す猛暑のせいか、裏庭の千両の葉が、焦げ茶色に葉焼けを起こしている。
    花のない真冬の殺風景な庭にあって、千両の小さな赤い実が、濃い緑の葉の間から
    チロチロと見えるのは、なんとも可憐だ。
    寂しい庭のそこだけが、灯りがともったように元気になる。
    赤という色の力は大きい。エネルギーや勇気、活力や暖かさをくれる。
    尤もそういう事に気づくのは、歳を重ねてからだが……。
    高齢になって知る「気づき」の多いこと。歳をとるのもそう捨てたもんじゃない。

    若い頃は見向きもしなかった色なのに、だんだん好きになる不思議。
     
    日よけに、古い日傘を千両に差しかけてやった。
    毎朝10時に差しかけ、夕方の5時に閉じる。
    ものぐさな私には珍しく、1日もさぼることなく世話をやいている。(現在の所は)
    この小さな緑色の実が大きくなり、やがてクリスマスやお正月の頃には真っ赤に色付くのだ。
    なるほど艶やかなその赤色から、草珊瑚とも呼ばれるらしい。

    私にとって千両はお正月のめでたい花。
    こんなに気にかけているんだもの、酷暑にも台風にも負けないで赤い実をつけてね。


                   2023,8,10