川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                  初天神



    体調が少し戻ってきたので、久しぶりに散歩をした。
    家から歩いて10分ほどの所に、道明寺天満宮と尼寺の道明寺がある。
    今日はなんだが人出が多いなと思っていたら、初天神だった。
    
    境内では盆梅展が行われ、骨董市も出ている。
    たわめられた枝から、梅がチラホラと白やピンクの蕾を覗かせている。
    もうすぐ春がやって来るんだなあと、感慨に浸っていると、
    「なんで、こんなものが?」
    不思議なものが枝に吊り下げられていた。貝殻だ。
    ヒオウギガイだろうか、それともホタテガイだろうか。
    何のためだろうか、気になって仕方がない。
    首を傾げながら、盆梅展をあとにした。

    10店足らずの骨董屋が露店を出している。
    冷やかし気分で骨董品を眺めたり、手に取ったりしていたが、
    お買い得のアクセサリーを見つけてしまった。
    最近はアクセサリーなど滅多につけないのに、余りの安さに手が伸びた。
    なんと5,000円が100円である。当時の値札がそのまま付いている。
    ずいぶん昔の、新古品だ。
    たとえ使わなくても、これは買わんとあかんでしょ。大阪のおばちゃんとしては。
    
     
    天満宮のそばに、道明寺はある。
    尼寺らしく清々しいお寺だ。
    私の好きな黒椿は咲いているだろうかと、魚籃観音の横を通り、本堂の裏に回りかけた。
    その時である。
    観音様の白毫がキラリと光った気がした。
    何度も見ている魚籃観音像である。
    白毫には水晶かガラス様の透明な玉がはめ込まれていて、普段の白毫は透明である。
    それなのに小さな豆球が灯ったように、光ったのだ。
    光線の加減だろうかと、
    後ろへ下がったり、前に出てみたりと角度を変えて眺めるが、やはり光っている。
    ただ真下から見上げると、透明な白毫だった。

    今まで私が気づかなかっただけなのか、それとも光線の加減なのか……
    光って見えた理由はどうだっていい。
    私は光った白毫を見たのだから……。
    
    それにしても不思議なことである。
    私は手を合わせ、お賽銭を観音様の足元に置いた。




                       2020.1.25