川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                  はまっている



    葛湯にはまっている。真夏なのに。
    最近、時を同じくして、友人と息子夫婦から葛湯を貰った。
    葛湯は何年ぶりだろう、いや何十年ぶりだろう。
    子供の頃、病気になると片栗湯を飲まされた。
    まれには葛湯も飲んだが、たいていは片栗だった。
    私は変に甘い、とろりとした片栗湯が苦手だった。それに冷めると、シャバシャバとした。
    
    ところがである。

    久しぶりに飲んだ葛湯は最高だった。
    冷たいものばかりで悲鳴を上げていたお腹が、優しく温まるのが分かる。
    熱湯でくず粉を溶かし、ゆっくりゆっくりかき混ぜると、やがて透明なとろみがついてくる。
    この手間がなんだか郷愁を呼び起こす。
    生姜味や汁粉風、柚子味など色々な味を楽しめるが、私は抹茶が気に入った。
    以来、キンキンに冷えたビールを飲んでは、冷たさを帳消しにするかのように、
    葛湯を飲んでいる。体にも心にも美味しい上品な味だ。
    
    
    吉野葛のお店「天極堂」は飛鳥にもある。
    葛菓子の販売の他に、食事や喫茶も出来るそうだ。
    緑濃い飛鳥の風景を眺めながら、食事もいいだろうと、さっそく出かけた。
    奈良県産の豚を使ったカツサンドが評判らしいので、それを食べ、
    食後には葛まんじゅうを食べた。お抹茶はお代わりをした。

    真夏の飛鳥は静まり返っていて、空の青さが清々しかった。
   
    ふと思いついて、弟に葛湯のお土産を買った。
    弟は片栗湯が大好きだった。
 


                 2021.8.25