川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                柴燈大護摩



    令和2年10月11日、西国札所5番の葛井寺で「柴燈大護摩」が行われた。
    境内には大勢の善男善女(?)が、その時を今か今かと待っている。

    11時、大峰山の講の行者が50人、法螺貝を鳴らしながら境内を一回りし、
    役の行者の石像前に集まり、護摩行は始まった。
    太い丸太が組まれヒバの生葉が丸太の四角い枠を覆い、大きな護摩壇が出現した。

    参詣者はみなマスク姿だが、さすが行者たちは鍛えているのかマスクはなしだ。
    凛々しい山伏姿の女性が1人いて、憧れるなあ……。

    柴燈大護摩は、不動明王の智火で煩悩を焼き尽くす儀式である。
    まず山伏の真疑を問う山伏問答から始まり、諸仏の加護と場を清めるための矢が4方に
    放たれ、護摩壇に火が点けられる。。
    白煙がもうもうと立ち昇り、やがて龍のような炎が高く舞い上がる。
    
    辺りは読経の声に包まれ、私の体は読経と煙に包まれた。
    「けむい」などと言ってはならない。勿体なくも畏れ多い煙なのだから。
    ここ葛井寺では12年に1度、子年に行われる行である。
    有難さも増そうというものだ。

    葛井寺のご本尊は千手千眼観音、子年の守り本尊である。
    年々に決まった守り本尊がおられるそうで、因みに来年の丑年を守って下さるのは
    虚空蔵菩薩だとか。

    護摩壇では、願い事を書き入れた護摩木が焚かれている。
    次から次へと護摩木が炎に投げ入れられる。
    私は平凡だが、「家内安全」と、我が家と息子の家の2枚を書いた。

    いよいよ善男善女のお目当ての火渡りである。
    浄化の炎で煩悩を焼き払い、災厄を祓うと言われている、有難い行である。
    境内には焼けた護摩木のオキの上を歩こうと、長い列が伸びている。
    (実際にはオキではなく、護摩壇の丸太を地面に並べた上を歩くのだが)

    皆さん勇気があるなあ。
    私は指を咥えながら素足で丸太の上を歩く人々を眺めている。
    こうして元気な人は、ますます元気になってゆくのだ。
    本来なら病弱な人間が、病魔を退治してもらうために、火渡りをしなければ
    ならないのに……。

    よし、12年後はチャレンジだ!


2020.10.11