川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                  富士山を制覇


    箱を開けるなり、「わあ、富士山だ!」と声をあげた。
    なんと雪をかぶった富士山のシフォンケーキだ。
    一生に一度は登りたいと思っていた山、新幹線に乗ると三島駅あたりで私をソワソワと
    させる山……。
    「ふじフォン」と呼ばれるお菓子は、山梨県富士吉田市で作られている。

    私と夫はまず富士山の半分を食べた。
    紅茶味のシフォンケーキは、しっとりふわふわだ。
    それもそのはず、
    卵は富士の湧き水で知られる忍野の卵、牛乳は富士の裾野の朝霧牧場のものだとか。
    富士山からの惠のケーキだ。

    昔、富士山の5合目までは車で登ったことがある。
    山容は見えるはずもなく、見るのは黒っぽい登山道だけだった。
    軽いからまだ食べられるけどなあ、と言いながらケーキも5合目どまりにした。

    次の日、残りの半分に生クリームをたっぷりつけて食べた。
    富士山は私と夫のお腹に丸ごと収まった。
    富士山を制覇した気分だ。

    富士山のケーキを食べていたら、また新幹線に乗りたくなった。

    
2023.11.26