川上恵(沙羅けい)の芸術村 | ||||||
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脱・断捨離 断捨離が叫ばれているというのに、ソファを買った。 ずいぶん昔になるが、部屋を広く使いたいと応接5点セットやカウチを処分した。 狭い家なのに、寒々しいくらいすっきりとした一部屋が欲しくなったのだ。 何も置かない空っぽの部屋は、他の部屋がどんなに散らかっていても、その部屋だけは 贅沢にひっそりとしていた。 母が生きている頃は茶室になったし、盆や正月には、大きな座卓を囲んで息子夫婦との ご飯会の場になった。それが済むと部屋はまたひっそりとした。 ところがである。無駄な部屋などと、贅沢なことを言っておれなくなった。 夫がよく怪我をするようになり、正座が出来なくなったのだ。 それにお客さんも正座のできない人が増えた。 そこで、部屋の隅に小さなソファを置くことにした。 家具屋の広い店内には、座り心地のよさそうなソファーが並んでいる。 場所を取らないコンパクトなソファーも並んでいる。 だが、私の目は小さなソファーを素通りして、寝心地の良いソファーばかりを眺めている。 夫のためのソファーのはずなのに……。 「これに決めた!」 「場所、とるで」 「いいねん、いいねん。これから最期まで一緒にいる家具やから」 どうやら断捨離にも適齢期があるようだ。
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