川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                   ちょっと幸せ


    猛暑で花期が狂ったのか、今年は二上山の麓の彼岸花に出会えなかった。
    一抹の寂しさを感じていたが、思わぬ所に咲いていた。
    あの精緻な花の作り、規則正しく上に向かって反ったおしべの繊細さ。
    彼岸花の別名は、地方名や方言を加えると数百から1000種以上もあるらしい。 
    私は曼殊沙華という呼び名が好きだ。法華経では天上の花という意味があるらしい。

    久し振りに道明寺天満宮まで散歩をした。
    銀杏の大木はまだ黄葉には早く、青々としている。
    神門をくぐり拝殿に向かって歩いていると、参道脇に赤い物がチラリと見えた。
    近づいてみると、白っぽい石灯籠の下方になんと彼岸花が。
    灯籠の火袋の下には12支が彫られている。
    な、なんと!
    今年は卯年。
    跳ねる兎の前にだけ彼岸花が咲いているのだ。天上の花が。
    まるで、兎に赤い花を捧げているようだ。今年を祝福しているに違いない。
    
    こういう時である。私が小さな幸せ を感じるのは。



                        2023.10.5