川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                   茶香炉



    今年の夏は酷暑のせいで、日本茶をあまり飲まなかった。
    健康茶や市販のペットボトルのお茶ばかり飲んでいた。

    昨日、久し振りに熱い日本茶が飲みたくなった。
    茶筒を開けてみる。
    「うん?」
    ひと夏を過ごしたお茶はなんだか香りが薄い、というより消えている。
    それに茶葉の色も元気がない。ような気がする。
    捨ててしまおう、茶筒を手にしたとき、そうだ!と閃いた。

    茶香炉である。
    受け皿にお茶を入れ、受け皿の下に火を置き、香を焚くように茶葉を焚くのだ。
    これなら茶葉を無駄にすることはない。

    夜になるのを待ちかねて茶香炉に小さなローソクを点けた。
    「わああ、なんて綺麗。なんてロマンティック」
    幻想的な小さな空間が広がった。
    しばらくすると香ばしいお茶の香りが聞こえてきた。
    
    秋だな、秋が来たんだな……。
    



                  2023.9.27