川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                    茶皮の手帳



    気がつけば10月4日。あと3ヶ月でお正月ではないか。
    何もすることがなく日がな1日家の中でゴロゴロしていても、こんなに時間は早く
    過ぎるんだ!
    そう言えば今年は手帳なしで過ごした。
    手帳がなくても生活になんら支障をきたさないということだ。
    手帳のない生活は、余計だらしなくなった気がするなあ……。
    手帳に記入する約束の〇印は、私の背筋をピンと伸ばしてくれたり、ワクワクさせて
    くれたり、緊張させてくれたりと、生活に彩を添えてくれた。

    いま私は、ほんの僅かなスケジュールをスマホに書き込んだり、小さな卓上カレンダーに
    書いたりしている。
    スケジュールとも言えないスケジュールを。

    黒革の手帳という映画があったが、私が使っているのは茶色の皮のカバーがついた手帳だ。
    20年ほど昔に息子が、
    「お母ちゃん、手帳はいいのを持った方がええよ」と、薄茶色の皮の手帳カバーに、
    使い勝手の良い中身を添えて呉れた。
    私は毎年、中身だけを変え大事に手帳カバーを使った。
    薄茶色はこげ茶色になり、しなやかな手触りになった。

    この手帳を開くとき、私はとても幸せな気分になるのだ。
    
    手帳には1月はじまり、3月はじまり、10月はじまり、とあるが、多分、今は手帳を
    買わないだろう。
    年末になったら、1月はじまりの手帳を買おう。真っ新な2022年のために。
    そして、
    来年は約束の〇印を一杯つけよう! 手帳の中身を嬉しいことや楽しいことで埋めよう!
    この茶色の皮の手帳カバーを、私は一生使うつもりだ。
 

    
  
    
                    2021.10.4