川上恵(沙羅けい)の芸術村
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               貧乏性



    気分が沈んだらお香を焚く。
    最も7pほどの線香型で、価額も20本で1000円くらいの、お手軽なものである。
    そんな話をしていたら、数日後、友人からお香が届いた。
    それも小さな桐箱入り、二箱である。

    箱の蓋に、麝香・沈香〇〇〇 と香名が書かれている。
    もう一箱は、シャム沈香〇〇 
    「えっ、麝香に沈香!」
    箱からなんとも深い香りが漂ってくる。
 
    
    そっと蓋を開けると、奥深く芳醇な香りが部屋中に広がった。
    心を鎮めてくれる香りだ。
    説明書には、
    お香の原料となる香木類、漢薬や竜脳を使わず、沈香だけで調合し、麝香を効かせてあると
    記されている。
    さぞ高価なお香だろう。なんたって桐箱入りだもの。

    でも、
    安価なお香だからこそ、惜しげもなく焚いていたのに……。
    こんな高価なお香、毎日、灰にするのは勿体ないなあ……。
    ああでもないこうでもないと香を触っていたら、指先に香りが沁みついた。

    大胆なくせに、小さなことには貧乏性になってしまう自分に呆れている。
    
    
 2020.7.20