川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                    閉会後の万博会場



    残念! お祭り騒ぎ大好き人間の私が、2025・大阪万博に行けなかった。
    体調が悪すぎて、チケットを没にしてしまったのだ。
    周囲の人たちはみんな万博を楽しんでいるというのに、あの出嫌いの小母さんさえもである。
    万博が終わっても、私の残念無念は治まらない。
    私はあの大屋根リングが見たいのだ。
    
    というわけで息子に頼んで万博跡に連れて行って貰った。
    人の姿がチラホラと見える。
    やはり私と同じような人もいるものだ。
    

    「これこれ、これが見たかったの!やっぱり、大きいなあ」
    警備員がここからは入れませんと、会場入り口で申し訳なさげに言った。
    パビリオンの撤去作業のための大型トラックが、ひっきりなしに行き来する。
    私は遠くから食い入るように大屋根を眺める。
    双眼鏡でみると、清水の舞台のような、書写山円教寺の摩尼殿のような骨組みが、はっきりと
    見えた。
    「きりりと美しいなあ…… 力強いなあ……」
    私はこれで満足なのだ。これが見たかったのだ。

    「地下鉄の夢洲駅も見てみるか?」
    ピッカピカの駅の中は、異様なくらいに、がらんとしている。
    人で埋め尽くされた大階段も、4機のエスカレーターも、人っこ1人いない。
    ホームも静まり返っている。
    電光掲示板だけが、
    「Osaka Metoroのご利用おおきに!」の青い光を放っている。
    「駅を独り占めやなあ。贅沢やなあ。最高や!」

    かくして私の大阪万博は満足のうちに終わった。

 


                     2025.11.21