川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                 爆睡



    5ヶ月ぶりに電車に乗った。

    家の近所を走る近鉄南大阪線や道明寺線は、いつ見てもガラガラだった。
    この分だと、あまりコロナの事を気にしなくても大丈夫だと嵩をくくっていた。
    ところがである。
    近鉄橿原神宮前駅からの京都線は、何校もの高校生たちでいっぱいだ。
    月曜日の12時前の時間帯なのに。
    テストかあるいは、変則的な登下校が行われているのかも知れない。

    学生たちは私の乗っている車両にどっと乗り込んできた。
    マスクをしている安心感からだろうか、一塊になって、大声でしゃべり声高に笑いあう。
    「車内は込み合っています。分かれてご乗車下さい」の車内アナウンスもお構いなしだ。
    こういう時だ。私が自分の不運を恨むのは。
    よりによって、同じ車両とは……。

    その日、
    ある勉強会で、始めてフェイスシールドなるものを着けた。
    それも念には念をというので、マスクを着けてである。
    それらを着けて、聞こえるように話すというのは、なんと疲れることか。
    それもここ何か月も家人以外とは話さないので、尚更だ。
    声は出ない、言葉は忘れる、冷や汗と同時に息切れがした。

    それにしてもウイズコロナとは、なんと気疲れすることだろう。
    外出先の、いたるところに病原菌がいそうで、心休まる時がない。
    帰りの電車は、コロナウイルスなどいない平和な頃と同じく、仕事帰りの人達で
    込み合っていた。
    この状態でどのようにしして、ソーシャルディスタンスをとれというのだろうか。
    いまさらながら、車の有難さを実感した日だった。

    だが、長い不眠症がその夜は爆睡だった。
    よほど疲れたんだろうなあ。
    
    
                   2020.7.14