川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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             明けましておめでとうございます



    テレビから除夜の鐘が聞こえる。
    あと何分かで真っ新な日が、年が、始まる。
    私の1番好きな、心引き締まる瞬間だ。

    2022年は夫の病気や私の体調不良など、重苦しい年だった。
    だが除夜の鐘が1つなるたび、重苦しい出来事を1つ持ち去ってくれる。
    また1つなると負の出来事が1つ消え去り、また1つ……。
    私はどんどん身軽になってゆく。

    昨日と今日の間には境目などないのに、不思議に正月にだけは境目がある。
    57・58・59秒 0:00時! 大好きな唐招提寺の鐘がつかれた。
    令和5年、2023年の始まりだ。
    私は母の遺影に蝋燭を灯し線香をあげ、新しい水を供える。
    なんという幸運だろう、線香は唐招提寺で求めた天平香・瓊花(けいか)である。
    瓊花は鑑真和上の故郷、中国揚州の名花だ。その香りは涼やかにして甘い。

    人気のない部屋の空気は冷たいが、途端に、それは清々しく澄んだものになる。
    新年の空気だ。蝋燭の炎が、線香の煙が、真っ直ぐに伸びている。

    私は遺影の前に座り、今年こそはいい人になろうと願うのである。
    

    明けましておめでとうございます。
    いつも「話のポケット」を応援していただき、有難うございます。
    本年もどうぞよろしくお願い致します。

                  2023.1.1.