川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                   白紫陽花



    友人が大きな花束を抱えて来てくれた。。
    「はい、プレゼント」
    中を覗くと真っ白な紫陽花、紫陽花、紫陽花……。
    まるで純白のドレスを着た花嫁。ジューンブライド。
    白一色の花束って素敵だ。

    さっそく私は水切りをして、赤いカットグラスに無造作に入れた。
    花瓶の中で、妖精たちが語らっているようだ。

    玄関が一挙に豪華に、そして凛とした。
    
    昔読んだ、小説だったかエッセーだったかの一場面が、よみがえる。うろ覚えだが。
    通りがかった見知らぬ家の庭先を見て、老婦人がこうつぶやくのだ。
    「まあ、なんと白い花ばかりで埋め尽くされた、清らかなお庭だこと。
    どの花も汚れなく清楚で、道行く人達を慰めてくれているわ。
    きっとこの花を育てている人は、心が綺麗な人なんだろうね」
                                   



                                     
                   2022.6.3