川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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               ああ、旅がしたい。



    無性に旅がしたい。
    いや、旅と言うのはちょっと格好が良すぎるか。けれでも旅行ではなく旅がしたい。
    旅と旅行は同じようなものだが、私の中では違いがある。
    旅には旅愁が、旅行には華やかな楽しさが、ついてくるような気がしている。
    
    
    特急サロベツで、札幌から原野と湿原を走りぬけた稚内への、どこまでも地平線だった
    風景。最北の海の荒々しさ、ずっと遠くにサハリンが霞んでいる。
    私は目を細め、島影らしきものを長いこと見つめていた。

    長崎の五島列島もまさに「旅」だった。
    23時30分、太古と言う船で博多港を出航する。
    漆黒の東シナ海を小さな船は、大揺れに揺れながら真っ白な波しぶきを上げる。
    明け方の海の幽玄なことと言ったら。神々しく気高い美しさだ。
    小さな島々に寄港する際の、もの悲し気に響く、「ボー」という汽笛の音。
    福江港には朝の9時に到着だった。    最果ての地

    近間では1人で乗る「万葉まほろば線」が好きだ。
    家を出て帰るまでたったの数時間だが、千数百年の時空を飛び越え旅している
    気分にしてくれる。
   
    ああ、旅がしたい。
    今の状態も平時ではなく非日常だが、それとは違う非日常に身を置いてみたい。
    飽き性の私は、そろそろコロナにも飽きてきたのかなあ。
    
    どこに行こうかな。

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                     2020.9.16