川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                  77本の薔薇



    「おめでとうございます!! 77本の薔薇の花束です」
    花束はずしりと重い。
    忘年会での、なんとお洒落なはからい。
    その花束の大きさ重さに、私はいっしゅん女優になった気がした。

    文章の講座に通い始めて25年。今年は25周年記念の冊子も作った。
    そして私は喜寿を迎えた。
    そんな私を生徒さんたちは祝ってくれる。
    花束を抱く私を、笑顔笑顔の拍手が暖かい。

    涙がにじんだ。甘えたいような甘やかな感情が湧きあがってくる。
    「この人達の前では泣いてもいいんだ」
    私の背中を彼女たちは優しくなでてくれる。
    「今年は大変な年でしたね。でも頑張りましたね」
    その手はそう言っている。

    あまりの心地よさに、しばらく私は背中を預けていた。
    祖母や母と同じ、慈しむような手の感触だ。
    
    いい人は、いいなあ……。


 

             2024.12.9