川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                    今年の桜



    落花さかんだ。
    今年は咲き始めから、満開、そして落花と、それぞれを楽しんだ。
    強風や強い雨に打たれなかったせいか、例年より花期は長い。

    咲き初めは名古屋・東別院の枝垂れ桜。
    いままでお参りした、どの本願寺よりも広大な本堂に驚きつつ、境内の咲き始めの桜に、
    心躍らせる。お寺の周囲や境内は、ほとんどが枝垂れ桜だ。
    満開の頃に、その桃色の大きな傘の下に入りたいなあ……。

    満開は、奈良県の佐保川沿いのソメイヨシノ。
    川面を覆いつくす、桜のトンネル。トンネルは延々と5キロに及ぶ。
    樹齢170年の川路桜の風格、生命力には、ただただ感動する。
    凄いね、元気だねと、言いながら、そっと幹に触ってみる。
    そして、
    奈良の名奉行だった、川路聖謨(かわじとしあきら)に思いをはせた。
 
    散り始めは、三室の桜。
       嵐吹く三室の山のもみぢ葉は 龍田の川の錦なりけり  (能因法師)
    眼下に龍田川の流れを見下ろす標高82mの小高い丘だ。
    三室山はモミジと共に桜の名所でもある。
    龍田川の堤も桃色の長い帯が伸びている。
    丘はまさに落花のただなか。白い雪がはらはらと舞っている。

    そして我が家のサクランボの実は、こんなに大きくなった。
    たった1週間なのに。

    あっ、そうだ! 夜桜を忘れてる!


                    2022.4.10