川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                    Love in a mist


   Love in a mist  「霧の中の恋」。
   そんな、素敵な花があることをを知った。

   恋、恋ねえ そう、恋よねえ……。
   忍びやかで、ミステリアスで、曖昧模糊とした恋。いっそ、相手にも知られない恋。
   たぶん互いが恋しているのを知っているのに、あえて告げない恋。
   そんな恋ならしてみたいなあ……。

   霧の中の恋は、和名でニゲラという。
   花びらに見えるのは実は萼だそうで、真ん中の地味なのが花だとか。
   花を取り巻いているフワフワの繊毛は、ビーナスの髪の毛と呼ばれているらしい。
   残念ながら、写真だけで、まだ実物は見たことがないが、
   その儚げなさまも私には好ましい。
   
   いらい私は怪しまれない程度に、よそのお宅の庭を覗いている。

   4月になるとどの家の庭も、一挙に明るく、華やいで、心を浮き立たせる。
   邸宅は邸宅にふさわしく、桜や雪柳、椿にモクレン……。
   小ぢんまりとした家の玄関先にはプランターや植木鉢。
   チューリップ・桜草・すみれにヒヤシンス……が可憐だ。

   よそ様の庭を覗き込みながら、ハッと気づいた。
   「春は庭先からやってくるんだ」と。

   だが、私のお目当てのLove in a mistには、まだお目にかかっていない。