川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                     蓮とカンナ


   「家で育てている蓮、ちっとも咲かないの」と、友人に話したら、
   しばらくして、蓮の根、つまり蓮根を届けてくれた。
   聞けば、地元で知られた蓮の寺から貰ってきてくれたとか。白い蓮と赤い蓮らしい。
   瓶やバケツ、大きな植木鉢など総動員して、6鉢にもなった。
   友人が教えてくれた通りに土を調合し植えたが、果たして清浄な花は咲くだろうか。
   由緒あるお寺の蓮だ、それに病後の彼女が自転車で貰いに行き、持ってきてくれた蓮だ。
   これは、何が何でも咲かさねばならぬ!

   「この8月にカンナが要るの。でも花屋でカンナは売ってないよね、困ったわ」
   と、近所の友達に話したら、しばらくして玄関先に大きな植木鉢が置かれていた。
   球根が埋まっているらしく、去年の枯れた茎が2、3センチほど残っている。
   彼女だ!とさっそくお礼の電話を入れた。
   聞けば、山の中腹にある○○ガーデンで買ってきてくれたとの事。
   「遠いのに。何で行ったん?」
   「歩いて」
   「家から歩いて? それで植木鉢を持って歩いて帰ったん? 重かったやろ」
   「うん、重たかった」
   ○○ガーデンは、家から車ででもちょっと距離がある。それを歩いてだ。
   これは、何がなんでも咲かさねばならぬ!

   そういえば私の退院後、まだ車いすを使っていたころ、手作りの弁当を届けてくれた友人が
   2人いる。

   私に彼女たちのような類の親切はできるだろうかと、自身に問うてみる。
   自信なさげな私がいる。口ごもる私がいる。
   鶴や亀でさえ恩返しをするというのに……
   私には一体なにが出来るだろうか……
   

                          2018.4.30