川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
エッセー  旅  たわごと  出版紹介 
                               



                   残暑お見舞申し上げます



     暑い夏でした。もっともまだ30度を超す日は続いていますが……。
     皆さんは、この夏を上手く乗り切られましたでしょうか?


     「ビール、美味しく飲めてますか?」
     今年の夏、私への暑中見舞の言葉は決まってこうだった。
     「お蔭さまで、美味しく飲んでます!」
     飲み過ぎるぐらいです、とはさすがに言わなかったが。

     酷暑のある日、私はこんなだった。
     
     気温はは35度をゆうに超している。だがどうしても人に会わなければならなかった。
     2時間ほどで、そそくさと仕事を済ませたが、濡れ雑巾を絞ったほども汗が流れ落ちて
     いる。
     化粧は剥げ、体から湯気が立ち上っている。
     ビールが飲みたくて仕方がない。アイスコーヒーやカキ氷では、この渇きは癒せない。

     1人で食べたり飲んだりするのは、平気なほうだ。
     だが生憎、行きつけの店は満席。もうすぐ空きますと店の人は言うが、待っていられない。
     知っている次の店まで歩くのも面倒だ。
     こんな日はビールに串カツでしょと、目の前の串カツ屋さんに飛び込んだ。
     大衆的な店に、女性客は私ひとりだ。隅の席に腰掛けた。

     「なんにしましょうか?」
     「適当にみつくろって5、6本、揚げて」
     言って、自分で驚いた。軽い衝撃。これってオジサンの注文のしかたやん。
     アカン! ほんまもんのオジサン、いやオッサン(品が悪くてすみません)になって
     しまった。
     間違っても女性は、適当になどとは言わない。メニューを食入るように眺め、ああでもない
     こうでもないと思案し、あげく海老などを注文するのである。
     尤もこういう店にはあまり足を運ばない。
     そういえば、中高年になると男性もオバサンになっている人、結構いるな。

     「ビールは先に、それとも串と一緒がいいですか?」
     「先に、お願い」
     キンキンに冷えたビールが体中の細胞にいきわたる。細胞が活性化する。
     その内にも串カツが揚がってきた。
     熱々の葱トン・マグロ・コンニャク・アスパラ・とうもろこし・海老が、キャベツと一緒に
     1本ずつ運ばれて来る。串を頬張る。そしてお約束どおり串を横に引き抜く。
     なんと、とうもろこしの美味しいこと。マグロの美味しいこと。ビールの……。
   
     テーブルについてから店を出るまで30分とかからない。
     しかしこんな姿、家人や知人には見せられないな。
     店員は「是非、またどうぞ!」と愛想が良い。
     そりゃそうでしょ、生中2杯に串を6本で、こんなに早く店を出る客はありがたいに
     違いない。
     息子に話したら言うだろう、「オットコ前な飲み方やなあ」と。

     と、まあこんな具合に猛暑を乗りきりました。
     まだしつこく暑さが残っております。秋には程遠いようです。
     残暑お見舞申し上げます。