今更の吉野ヶ里
イヤリングが好きだ。
それも細く長い鎖が、シャラシャラと揺れるイヤリングが。
ある博物館でそんな耳飾りを見た。
古墳の中で、副葬品として長い眠りについていた耳飾りは、退色し
元の金色の輝きはなかったが、その精緻さは微かな風にも揺れそうだった。
くすんだ金色の細い鎖の中ほどに、小豆くらいの、やはり金色の丸い球がついていた。
丸い球は「空玉」というらしかった。
うつろだま……、なんと美しい言葉だろう。その言葉にすっかり魅了されてしまった。
私はいつも唐突に、こんな些細なことに惹かれてしまうのだ。
中が空洞なので「空玉」というらしいのだが、その儚げでたよりない「うつろ」という
響きが心にストンと落ちた。
この耳飾りは、どんな人の耳元を飾っていたのだろう……。
これはちょっとやっかいだ、恋の始まりに似ている。
げんきんなもので、以来、古代史や博物館が好きになった。
というわけで今回は、何を今更という感じだが「吉野ヶ里遺跡」を訪ねた。
邪馬台国畿内説を頑強に信じる大阪人の常として、吉野ヶ里は鬼門だったのだが……。
素直に、吉野ヶ里遺跡は面白かった。
物見櫓がそびえ、王の家や妻の家、大人の家や倉などが、広い空の下に点在している。
環濠集落である。
死者を埋葬した甕棺墓列は圧巻だ。
2000年という時間の隔たりは、長いのか短いのか……。
甕棺を見ていると、時間の概念が怪しくなってくる。
黄泉の世界に迷い込みそうで、未練を残しながらも私は墳墓を後にした。
さらに今回は、1年間で9日間しか解放されない、九年庵の紅葉の付録つきの旅でもあった。
九年庵のゆるキャラ
2011.11.22
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