川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                    今年の出来事



     今年もあとわずか。
     年末になると恒例のように今年の10大ニュースなるものが、マスコミをにぎわす。
     さしずめ今年はIPS細胞の山中教授のノーベル賞受賞、政権交代、尖閣諸島問題、
     それと、みんなが一斉に空を見上げた、金環日食かなあ。     

     ならば私にとっての10大ニュースって、なんだろう?
     10は無理でも3つくらいなら、すぐに思い浮かぶだろう。

     1つ目はすぐに浮かんだ、飲みたくない病。生れて初めての体験だった。
     本当に辛かった。砂をかむような無彩色の数ヶ月だった。
     酷暑にも体はビールを欲しがらず、麦茶ばかり飲んでいた。
     人は嬉しい記憶より、辛く苦しい記憶の方が鮮烈らしい。

     2つ目もすぐに浮かんだ。
     日本列島の最北端駅と最南端駅を訪ねて、緯度の認識を新たにしたこと。
     私の住む街の緯度が34度34分と知ったこと。
     これはちょっとした感動モノだった。

     3つ目、3つ目は……、
     うーん、なんだろう? 困った、なかなか出てこない。
     たったの3つ、たったの3つが、思い浮かばないなんて。
     この1年間、何をしていたのだろう。
     飽きるほどテレビを見ていた事しか、思い出せない。
     なんだか「うつろ」な世界の住人だったような気分。

     あわてて手帳をくってみる。
     暑苦しいほどに、重苦しいほどに、スケジュールが書き込まれている。
     日々の証が文字として残っている。

     うそっ! これって今年だったの、去年の出来事じゃなかったの?
     細かい字の書き込みが、私の中ではすっかり遠い過去の出来事になっている。
     時々には緊張もし、心浮き立ち、笑い涙した日々なのに……。
     過去を追わない性格だが、「それにしても追わなさ過ぎじゃないかい」と、
     自嘲気味に呟いた。
     それとも私の脳内時計はゆるんでいるのだろうか?

     1月1日からの日々を丹念に追ってみる。過ぎ去った日々が甦る。
     だが、どれももはや過去。色彩を失っている。

     かくして私の今年は、鮮明に記憶に残ることは2つしかないという、
     なんともお粗末なこと。
     無造作に、大雑把に、粗雑に、フワフワと生きていたんだろうな。


     そうだ、あった! ありました。もうひとつ、3つ目がありました。

     10年ぶり、いやいやもっとかもしれない。
     クリスマスイブに息子夫婦と夫と4人で、クリスマスケーキを食べた。
     サンタクロースの砂糖菓子なんぞをケーキに飾って。
     ついでにローソクも立てようかと言ったけれど、さすがに「いいね」とは、
     誰も言わなかった。

     朝には少しだけ雪も舞っていた……。



           今年も戯言にお付き合い下さいまして、有難うございました。
           良いお年をお迎えくださいませ